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夜更かしのススメ

バリトンの大貫史朗さんを取材。東京芸大卒。コンクールで
優勝。アルド・プロッティ氏の招きでイタリアに留学。
そして現地でもプロとして活躍し、ヨーロッパと日本で
活動する人なのだが、クラシックの本場で日本人が現地人
と伍していく事の大変さを伺う。演奏家の労働許可の関係で
EU圏で出演できる劇場は、トップクラスのごくわずかと、
近所の映画館やクラブのようなところに限られる。つまり
大半の「会館」には「外国人」は出演できないわけで、
多少上手くても、他をねじ伏せる圧倒的な力がなければ
はい上がれない世界だそうだ。そんな中で、地方講演で
小さな町に出張すると、そこには大物が駆け出しの頃に
訪ねた事を知っている観客がいて、ちゃんとした物差しで
評価してくれるという。ヨーロッパはコンサートも食事も
スタート時間が遅く、真夜中までみんなが楽しんでいる。
日本の「箱モノ文化施設」はおしなべて会館の管理者が
早く帰らないといけないために制約が多いし、レストランも
シンデレラのように午前0時を過ぎてオーダーできる所は
まれである。洋行帰りのシェフに話を聞くとヨーロッパで
店を出すのは体力勝負だし、もう今更できないという。
しかし本当のところは、サービスを提供する側と、受ける
側の双方が、夜が更けるのを忘れて楽しむような余裕が、
高度成長からバブル崩壊を経ても、ないような気もする。
「サービス業の醍醐味は収入にあるのではなく、お客さんに
喜んでもらうこと。だから従業員教育は難しくない」とは
星野リゾートの星野社長に聞いた言葉ではあるが、客は客で
サービスに対して格付けするのではなく、一緒に楽しんで
素直に「ブラボー」と叫ぶ。それが大事なのだと感じた。

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