Sigh!
【ラジオデイズ】
民間放送連盟の全国大会に出席。
審査をした作品の担当者が、表彰式で受賞するのを見届け、
ようやく一仕事したような気になる。各局のお歴々が
参加するので、場違いな感じがしつつも、しょっちゅう
ダメ出しされていた直属の元上司や、そのご同輩と
いった方々に「さん」づけで呼ばれ、恐縮至極。いやあ、
やっぱり、円満退社はするものである。
講演会で五木寛之氏の「うつの時代とメディア」という
話が非常に面白く、聞き入ってしまう。「鬱」というのは
木々が勢いよく生い茂っているさま、という意味の字。
勢いがあるからこそ、「蒼」く影ができるほどで、決して
病気ではなく、「愁」は人間なら誰もが持つ、理由なき
悲しい感情のこと。今「鬱」は「愁」と取り違えられ、
(不定愁訴とはいうが)クスリで治したり、ポジティヴ・
シンキングで克服せよ、などといわれるが、その感情こそ
人間が生きている証で、背中を丸め、ため息をついて
やり過ごす事が肝要だという。韓国の「恨(ハン)」も
歴史上民族が受けた屈辱をうらむ、というのではなく、
人間が大人になった時に自分がどうしてもコントロール
できない、理由もなく自分の存在意義する否定するような
悲しい気持ち、という意味で語り継がれ、それは黒人の
「ブルース」やポルトガル語の「サウダーデ」に匹敵
する感情だという。日曜日の夕方5時のJ-waveの番組
「サウジ・サウダージ」はブラジル人が一番大事にする
「郷愁」とか「哀愁」の「サウダージ」にこだわっている。
かかる曲が明るいサンバであっても何か物悲しく感じる
のは、日本人にも通じる「愁」が、日曜日の特にその時間
に感じられるから(サザエさんという人もいるが…)で
あろう。陰陽を併せ持つのが人間。恐れる事はない、
ため息をつけば楽になる。以前の仕事場でのOLさんが
「ため息を一つついたら、一つ幸せが逃げちゃいます」
と言っていたが、これから馬券が外れた時には、無理せず
大きくため息をつこうと思う。
「ラジオ」カテゴリの記事
- Clubhouseが教えてくれたこと(2021.02.09)
- 伝説の「Grand Ole Opry」公開生放送を見る(2016.01.16)
- オールナイトニッポンのテーマ曲をめぐる旅(2015.02.22)
- BBCのDJがアップルに移籍(2015.02.18)
- 「放送ネットワークの強靭化に関する検討会」中間取りまとめを考える(2013.07.22)
Comments
なるほどブルースですか。
日本やアジアの人々の感情なのに、ブルースやサウダーデと説明されると理解できるというのも不思議な感じがしますが、でもとても納得しました!
Posted by: ぼうしゃ | October 26, 2006 10:10 AM
ぼうしゃさん
人間の感性というものに敏感な人々というのはやはりいて、それぞれに共通するものを持っているのは洋の東西を問わないということなんでしょうね。いろんな国の音楽が聴けるというのは、そんな理解が増してありがたい事です。
Posted by: 入江たのし | October 27, 2006 01:02 AM
非常に興味深いお話ですね。
確かに音楽に例えられると、とても解りやすい気がします。
アジアの音楽といえば、(私としては)陰でも陽でもない中間の音を心地よいと感じますが、「陰陽を併せ持つのが人間」という言葉をお借りすれば、どちらかにベクトルが傾いている場合も結局のところ、その逆の状態を思い起こさせる気がします。
「光が強い程、より深い闇を生む」という誰かの言葉を思い出しました。
「感性」
鋭いものは持ち合わせていませんが、出来るだけ鈍らせないようにしたいものです・・・
Posted by: nagomu | November 09, 2006 01:01 AM
nagomuさん
「光が強い程、より深い闇を生む」。けだし名言です。
南国の木漏れ日などの写真はコントラストが強烈ですものね。
忄の漢字は心の奥底を表す言葉だそうです。だから情は心の中が
青く息づいている、それを報じるので「情報」なのだとか。
Posted by: 入江たのし | November 09, 2006 12:04 PM