放送事故と不体裁
【ラジオデイズ】
世界における放送事故とは、送信系統の故障などで
放送波自体が停波してしまう、というのが本来の意味。
日本ではそうした場合に総務省に届けを出すのが常だ。
例えばラジオにおける無音状態が続く状態に関しては、
その長さに定義はなく、各局が独自に5秒とか10秒
などと判断しているにすぎない。しかし予定された
時間に番組やCMが放送されないという事に関して、
また明らかに不適切な発言なども、日本では事故だ。
CMの送出、提供クレジットの間違いに関しては、
民放である限り重大な契約違反となるので、これも
放送事故として取り扱われる。しかしながら音楽や
コメント収録素材の出し間違い、などは事故以前の
番組不体裁として取り扱われ、局内での処理が普通。
しかしいずれにせよ、事故の起こった経緯を明らかに
して、より重大なミスを起こさないようにすることは
非常に大切である。民放ラジオで長い間仕事をすると
自分のミスであろうが、機械の動作不良であろうが、
そうした現場に居合わせることは避けられない。
放送機材がデジタル化し、いろいろな規格が入る事で
「フリーズ」や「相性の問題」など、アナログでは
考えられない原因が引き起こす不体裁が増えた。
機材的なものは仕方がない、とはいえバックアップを
常に考えねばならず、とっさに対応できないと、
人為的なミスとされてしまう事にもなる。
不注意が原因で、送出スタッフの「気」を感じつつ、
フォローするような体制が通用しなくなってきた。
サッカーW杯フランス大会でのフランス対イタリアの
決勝戦のラジオ中継の時の事である。イタリアの
勝利が絶望的になった瞬間から、国営放送のRAIが
中継と解説を一方的に打ち切り、何の意味もない音楽を
流した事があった。これはけしからん不体裁である、
と日本ではなるだろうが、何とも人間味あふれる放送
だったと今でも思う。善し悪しは別として日本では
体裁よく進行することが優先されて、そんな人間味が
ラジオから消え、無難な進行が優先されないか心配だ。
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