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ラジオの2013年3月問題

【ラジオデイズ】

テレビのデジタル化によるいわゆる「跡地問題」で、
アナログテレビ時代の1〜3ch、世界的にFMラジオに
割り当てられている「V-low帯」をどのように使うか、
という議論が何年経ってもまとまらない。
問題が複雑になったのは、媒体としてのラジオの
ビジネスモデルが変わりつつある時期にあたること。
マーケットの縮小はリーマンショックや震災が原因
ではなく、構造的なものであるからに他ならない。
そしてもう一つの要因は免許事業として認可する側の
総務省はもちろん、NHK、ラテ兼営局のAM局、
ネットワークに属するFM局、独立系のラジオ局、
また経営規模と資金力では県域局とは競争にならない
コミュニティFM局のいずれにも将来のビジョンが
明確に見えていないからである。
僕自身としては、2009年12月の「月刊民放」では、
難聴対策と送信所老朽化による設備更新問題でAM局の
V-low帯のFMへの移転を唱え、その方式はデジタルも
アナログも同じ周波数で放送可能なIBOC方式が適当だ
とした。2010年の「ラジオと地域情報メディアの
今後に関する研究会」の構成員としては、デジタル
ラジオの事業者は上下分離、すなわち送信設備に関して
ラジオ局が負担せず、番組の制作に専念し、災害対策も
含めてローカル・メディアとして生き残っていく事が、
ラジオ局が生き残っていく道筋だ、という結論を
メンバーとまとめた。ただその際のデジタルの方式に
ついては、日本のモバイル・デジタル放送の基準である、
ワンセグを中心という「妥協」をした。ラジオという
インフラの姿を保つための「延命策」を考えた結論だ。
 今年になって総務省では「放送ネットワークの強靭化に
関する検討会」を開催し、これを機にニッポン放送と
エフエム東京でこの問題について、全く違うスタンスが
打ち出されている。デジタル化は見送ってアナログFMに
移転するというニッポン放送と、デジタルラジオ放送を
前倒しで推進するエフエム東京、という構図である。
だがどうにも腑に落ちないところがある。既に終了した
「デジタルラジオ実用化試験放送」の二の舞いなのか、
それともそこにすらたどり着けないのだろうか。そして
果たしてリスナーが享受するメリットは何なのだろうか。
 日本のラジオは海外のそれに比べて、ハード面における
コストがかかっていて、特にイニシャルの設備投資には
莫大なお金が投下される。それでもライバル・メディアが
ない時代には、十分リクープできたし、広告料金について
強気の価格設定を裏付ける「目に見える設備とプロの仕事」
があった。しかし放送局の機材こそ依然プロ仕様でも、
最近は収録などの制作や音源編集は個人が所有する
アマチュアも使う機材。番組制作に付帯するサイト更新など
作業量が飛躍的に増えても、制作費は減少し人員は削減され、
放送事故やクレームを綱渡りで回避している制作スタッフ。
これではリスナーの求める、さらなるクオリティが高い
番組作りは臨むべくもない。
 つまらないラジオ番組が高音質で聴けたり、陳腐な内容が
メタデータとして見る事ができて、リンクしていても、
スイッチを切られるだけである。とにかく面白い番組が
流れてこなければ、いかに高性能でもラジオはただの箱。
防災グッズとしても懐中電灯や乾パンと同じように
しまい込まれるだけだ。
 さてここでとどまるのか、前に進むのか。ラジオに
とってはいずれもイバラの道であることは間違いない。
しかし次なるビジョンを、もう一度ソフトの原点から考える
ことなくして、ラジオの将来はないと断言できる。
それでも「希望はあなたを捨てるのではありません。
あなたが希望を捨てたのです」という事だけは
ないようにしたいものだ。

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