21年分のありがとう(最終回)
【ラジオデイズ】
麻布十番祭りの事ばかり書いてきたが、先日とある
ラジオ制作者に、またAVANTIはどう作っていたか、
と質問された。まるで生放送でバーから中継している
スタイルなので、番組がはじまった当時は生放送では
と勘違いされた事もあったが、放送時間が場所により
微妙に異なるので、残念ながら録音番組と白状せねば
ならない。番組開始当初の「内輪話」が中心の時代は
毎週月曜日と火曜日の夜、AVANTIに沢山の人が来た。
「聞き役」と呼ばれる人間はおらず、友達を連れて
カウンターにやってくるので、自然と親密な会話が
収録できた。とはいえあまりに「内輪話」のために、
オンエアするのにはばかられるクオリティのものも
あったのは確か。番組のことだけ考えればずいぶん
「打率の低い」収録のスタイルだったといえる。
ある程度テーマを決めてそのテーマに沿った知識ある
「コニサー」を呼ぶようになってから、「打率」は
上がったものの、必ずしも友達と一緒にバーに来て
くれるわけではないし、スケジュールもバラバラに
なるために、制作のスタッフはAVANTIが空いている
状況と、ゲストと聞き役の調整をしなければならなく
なる。キャスティングをするため、テーマの決定は
必然的に前倒しになり、「コニサー」の会話をつなぐ
紳士とバーテンダーとのやりとり、そしてバーで
起きるコントの収録をパズルのように組み合わせる。
制作スタッフは違った意味で汗をかかねばならない。
おまけに話のクオリティと語り口は必ずしも一致せず
「聞き役との相性」などについては、全く別角度で
評価する、というスタッフの作業もあったのだ。
「トークの内容が芯を食っていない」という厳しい
評価はゲストだけでなく、「聞き役」のせいでもある。
オプラ・ウィンフリーのようなインタビューアーは
いないかわり、乗せて聞き出す、黙ってうなずく、
何も知らないふりをして質問を続ける、などなど
さまざまなテクニックに長けた「聞き役」が生まれた。
もちろんAVANTIで流れるジャズの選曲は、それ自体が
コンピレーションCDにもなったくらいのクオリティ。
当然ながら選曲を担当するスタッフもいたのである。
番組というのは、こうした水面下の努力が沢山あって
はじめて氷山の一角が、世の中に出るものである。
沢山のスタッフがいたから、いい番組ができるという
ワケではないけれど、おそらくこれからラジオでは、
こんなに手間をかけた番組は作られないかも知れない。
番組が終了して1カ月。そろそろ後ろを振り返るのは
おしまいにしよう。
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