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February 2015

後藤浩輝騎手よ、安らかに。

はじめて後藤浩輝騎手のことを意識するようになったのは、
彼がフロリダのカルダー競馬場に武者修行に出た、今から
20年近く前のことである。アメリカ東海岸で友人たちの
シンジケートによる競走馬を、はじめて持った頃だった。
その時には会えなかったが、なんとか愛馬に騎乗してほしい
と思ったのがきっかけだ。半年で彼は一回り成長して帰国。
トップジョッキーの仲間入りをしはじめたころになって、
個人的にも話をするようになった。競馬サークルの中から
騎手になるというパターンが多い時代に、全く縁故がない
状態から気概と人柄でのし上がってきた実力派である。
それだけ苦労も多かっただろうし、軋轢もあっただろうが、
メディアの人間には時にはやりすぎなくらいにおちゃめ。
ファンに対しては地味に頼まれたサインをまめにするなど、
とにかくサービス精神の塊のようなジョッキーだった。
番組でお世話になったエピソードがある。「美浦トレセンを
彼に案内してもらう」という企画で、収録機材のトラブルで
長時間のインタビューを、何と3回も録り直したことがある。
嫌な顔一つせずに、つきあってくれて、しかもそれぞれに
違うエピソードを交えて話してくれた、というのには驚いた。
それってまるで芸人さんじゃないか…。もし騎手になって
いなかったら、フランス料理のシェフになっていただろう、
という話は今でも印象に残っている。そして有馬記念の
前日特番を中山競馬場から生放送した時、サンタクロースの
格好で現れて、背負った袋から会場へのプレゼントを
配ってくれたことがあった。「ボクが競馬の人気のために
できることがあったらなんでもする」と言った時の笑顔は
忘れられない。再びアメリカに遠征した時に現地の調教師を
紹介したけど、自分の関係する馬ではフォーカルポイントの
アイルランドトロフィーの勝利が唯一の騎乗で勝利だった。
リハビリ中にゲストで来てもらったり、競馬教室のバック
ヤードツアーでサプライズ遭遇をお願いしたり、企画で
お世話になった思い出は、本当にたくさんある。
理性的に考えれば、自殺する理由は何一つ思い浮かばない。
一つ間違えれば死んでいたかも知れないような落馬事故を
何度か乗り超えて来て、明日レースがあるにもかかわらず、
わざわざ自ら死を選ぶ、なんていうことは考えられない。
何か「魔がさすような」病気になってしまったのだろうか。
つつしんで哀悼の意を表したい。

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オールナイトニッポンのテーマ曲をめぐる旅

「ビタースウィートサンバ」がオールナイトニッポンの
テーマ曲で50年近く親しまれているのはいうまでもない。
この曲が選ばれる背景には、高崎一郎氏と朝妻一郎氏の
ストーリーがあった。まだ設立間もないパシフィック
音楽出版の管理楽曲だった「Lollipop And Roses」は
Jack Jonesの出世作。Herb Alpertがこの曲をカバーし、
アルバム「Whipped Cream And Other Delights」に収録
していた。オールナイトニッポン開始にあたり上司であり、
番組プロデューサーの高崎一郎氏からオープニングテーマ
選定を任された朝妻一郎氏は、このバージョンを聞かせた
ところ、「ちょっとテンポが遅い」と自分でアルバムの
他の曲をチェックして「Bitter Sweet Samba」を選んだ。
高崎一郎氏自身が「スタッフがA面とB面を間違えた」
として自分の選曲の関与をはぐらかしたため、長い間
都市伝説のようにこの逸話が一人歩きしていたのである。
去年の栃木放送の特番で当事者の朝妻一郎氏に聞いて、
この真相が明らかになって、さすがに話を面白くする人
と感心したのであるが、実はこの話には下敷きがあった。
フロリダツアーを行っている御大ジャック・ジョーンズ氏。
77才とは思えぬ声量と、ファルセット。長年練られた
外さないステージングとMCで、しんみりさせながらも
笑いをとる、エンターテイナーの真骨頂を現地で堪能した。
そこで彼の2曲めのビッグ・ヒット「Wives And Lovers」
に触れた時「この曲はもともとある映画のテーマ曲になった
シングルのB面に入っていたものを、たまたまDJが間違えて
かけてヒットして〜」。えっ、どこかで聞いた話である。
実はバート・バカラックとハル・デビッドのこの曲は、
同名の映画の宣伝のための曲だったが、実際には映画では
使われなかった。そしてJack Jonesがインスパイアされた
曲としてレコーディング、B面は別の映画のテーマ曲で
「Toys In The Attic」という曲である。ただステージで
くどくどと話すより、その方がずっと面白いのだから、
きっとそいう事になったのではないかと推測する。
高崎一郎氏は恐らくそんな事情や、Jack JonesのMCを
百も承知だったはずで「Lollipop And Roses」から
「Bitter Sweet Samba」へのテーマ曲変更を、これに
なぞらえたのではあるまいか。高崎一郎氏が亡くなった今
真実は謎である。ちなみに打ち上げでお会いした本人は
「タツ・ナガシマ(永島達司氏)に呼ばれて日本に行って
ミソノってとこでごはん食べたけどよかったなぁ。まだ
お店あるの?」はい、元祖鉄板焼「ステーキのみその」は
まだございます。喜んでお伴しますのでいらして下さい。
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BBCのDJがアップルに移籍

人気ラジオ番組「BBC Radio 1」のDJゼイン・ロウが
3月5日の放送を最後にBBCを退職。アメリカに移住して、
アップルでのキャリアをスタートするという。彼は長年
BBC Radio 1でDJを務め、Arctic Monkeys、Adele、
Ed Sheeranなどの新人アーティストを発掘し育て、
Jay Z、Kanye West、Eminemといった大物との独占
インタビューを手がけた。ライブDJとしてSkrillexや
The Prodigyのツアーに同行。MuseやFoo Fightersの
オープニングを担当したりしたこともある。
アップルは昨年、ヘッドホンと音楽ストリーミングで
人気のビーツ・エレクトロニクスを買収すると発表。
先行しているストリーミング・サーヴィスよりも低い、
音楽業界での位置づけを「Beats Music」のリニューアル
によって果たすのだろう。ゼイン・ロウ氏を起用するのは
その中心人物としてではないか、とお考えられる。
音楽配信サーヴィスに限らず、ニュース配信サーヴィスも、
アルゴリズムを使った自動でコンテンツを表示する、
というシステムが隆盛だが、誰が記事を書き、誰が選ぶのか
というキュレーション(目利き)が大事という方向に
振り子が振れる、潮目となるトピックスかも知れない。

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