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生クリームの「シャンテリー」と競馬の「シャンティイ」

25年前の6月。有給消化の旅の一環でパリを訪れた時、海外競馬観戦は未体験だった。CDを買った「fnac」の家電売り場でシャンティイの競馬中継。そのエンディングで「明日はディアヌ賞」という告知があった。
せっかくだから行ってみようと、朝早くからクルマを運転して、高速を降りたら大渋滞の競馬場への道。駐車場も一杯で路駐するのだが、クルマを降りると派手な帽子をかぶりハイセンスなモードをまとったご婦人が競馬場に向かっている。さすがだなぁ、と横目で見ながら競馬博物館を見学して競馬場の内馬場に踏み入れると、競馬など見ないで社交界のごときパーティが繰り広げられていた。競馬観戦ではエルメスの顧客ご招待の会場だったのである。
小体なスタンドに行くとそれなりに込んではいたが座席を確保することが出来、Jolyphaという牝馬の勝利を見届ける。掲示板の着順が当時は掲揚式だったのが忘れられない。そして帽子コンテストの勝者がビジョンに映し出された。これは仏オークスで、ディアヌ・エルメスにちなんだイベントだったのか。それとは対照的にゴール前の芝生の上では、馬券オヤジが旨そうに焼きソーセージを挟んだバゲットをぱくついていた。
レース後公園にある名物「Gaufre avec Chantilly」の屋台でデザート。Chantillyは現地の人の発音だと、やはりシャンティリィと聞こえる。そう、パフェのメニューにある「シャンテリー」こそ、ここが本場の「生クリームのホイップ乗せ」である。ゴーフルは風月堂の薄焼きではなく、ワッフルのフランス語なのだ。ただ焼き立てのワッフルの上の生クリームはつるりと滑り、芝生の上にポトリ。同じことをする人がたくさん居るのだろう、地味な注意看板が立っていた。
新しいスタンドのシャンティイ競馬場(日本ではこう表記)の凱旋門賞で、名牝の誕生を目撃し、馬券の的中にすっかり気を良くしても、何か足りないと思っていたところに、その移動販売はあった。今回は「シャンテリー」をダブルにし、落とさないように注意しながら食べたとはいえ、甘くない単なるホイップクリーム「倍づけ」は余計だった。25年前に落とした分をようやく取り返したのだけれど…。


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