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January 2019

パリでヨーロッパの肉を喰らう

パリのステーキハウスでもっともよく知られるSevero。その日本の店を立ち上げた柳瀬さんが、パリに戻って自分のステーキハウスを始めると知ったのが去年秋。彼のヨーロッパの牛肉に対する情熱は、フランスでもノルマンディー、アイルランド、スペインなどにおよび、ボクが知らない世界の扉を開けてくれることもあり、開店したら必ず駆けつけると約束した。
12月に開店し、年が明けて訪れたVertus。個人的に最近パリでお気に入りのBoulogneの住宅街Billancourtという地区にある。アメリカのステーキハウスは、扇型のテーブルを囲む革張りのソファのような椅子がイメージだが、パリのそれはまさに簡素なテーブルに椅子という学食のような雰囲気。ランチに食べる気軽な定番料理がステーキとフレンチフライだから、ここも昼にはご近所さんで賑わうそうで、お子さまメニューまであった。
とはいえ肉に関してはは本格的で、スペインのガリシア産50日熟成のサーロインが輝いているので、早速それをオーダー。2人分1kgが基本だが、お願いして半分を頂くことに。ブルターニュの野菜、リードヴォーなどいろいろな前菜などツマミに、ヴォーヌロマネをちびちびやるうち、お待たせしました、と木のプレートに乗ったステーキがやってきた。
外はカリッと焼けているが、中心部がねっとり舌にまとわりつく。これこそが熟成肉の醍醐味だ。醍醐は古来ヨーグルトだというから、発酵の旨味こそ醍醐味と言えるだろう。顎を使って噛みしめつつ、到着の夜で胃が疲れているかも、などと筋っぽい脂身を切り分けて損をした。全く問題なく食べられたのに…。10歳くらいの牛との事で、これは日本には現在の決まりだと入って来ない肉なのだ。
和牛を出さないのか、とフランス人に言われるそうだが、日本で食べられないヨーロッパの肉にこだわりたいという。これ試すためには、2か月くらい前から相談してパリに来る時は必ず訪れたいと思う。
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すき焼きの地でステーキに賭ける情熱を味わう

【ステーキは素敵だ】
「熟成肉」というワードがポピュラーになったここ数年。10年以上前からアメリカで「エイジングビーフ」のステーキを食していたボクにとって、塊肉を食す文化が受け入れられるかも、という期待がありつつ、日本では多くが「熟成ではなく腐敗」という事実にがっかりすることにもなった。大阪で生まれ「肉といえば牛肉」という文化で育ったが、東京では微妙な違和感を感じて30年。はじめて熟成肉を売る肉屋「中勢以」を見つけたのが10年前の記事である。
よくいろんな人から「ブログで書いているステーキ屋は海外ばかりだけど、日本ならどこがいい」と聞かれるのだが、それは一番答えにくい質問だ。というのも自分の中でその正解は見つからず、アメリカから日本に進出したステーキハウスは内外価格差が甚だしい。自腹でちょくちょく行くなら、その分アメリカで新店を開拓したくなるし、新しい潮流は世界中で起っている。
昨今周囲の肉好きの間でも評判で気になっていたのが、滋賀県草津にある精肉店「サカエヤ」の存在。そしてその肉を使ったビストロ「SAISIR」が併設されたことで、がぜん興味を持っていた。機会があって南草津駅からバスで10分という店舗にランチで向かう。近江牛を育む土地柄に、瀟洒な建物が存在感を放っている。ランチとはいえちゃんと牛肉を味わいたく、当然コースではなくアラカルトをオーダーした。
「サカエヤ」独自のこだわりともいえる完全放牧野生牛の「ジビーフ」、そして近江牛のランプ肉をオーダーする。厚切りの肉を長州備長炭を使い、珪藻土の釜の中で焼くのに30分ほどかかるとのこと。サラダや自家製シャルキュトリーの盛り合わせなどの前菜を食べつつ到着を待つ。木のプレートに載って焼き上ってきた肉は、たっぷりとつけ合わせの野菜が添えられていて、見た目にも色鮮やか。かといって肉自体は決して重くはなく、合計500gくらいだが食べ飽きないのは、やはり肉質のよさたるゆえんだ。釜だから輻射熱も使って焼く、というやり方だが、いろいろな部位で焼き方には「正解がないんですよ」と村田シェフは話す。肉の旨味を噛みしめながらその余韻に浸ったのだが、焼き具合は外側の焦げ目がまさに自分好みだった。ステーキは焼き方を聞かれるのが一般的だが、一番おいしいと思われる焼き方を供するというスタイルは、海外では往々にしてあることだ。おそらくもう少しレアだと、肉の厚みが勝ってしまうだろうし、焼きがこれ以上入ると外側の焦げ目が気になるだろう。ただこのあたりは人によって好みはあるに違いない。
シャルキュトリーではブーダン・ノワール(血を使った豚ソーセージ)の臭みがほとんどないのに驚いたし、フロマージュ・テット(豚の脳の煮こごり)も、パリの肉ビストロと全く同じテイストだった。牛肉だけではなく、肉尽くしでオーダーしても外れがないのは、やはり精肉店が経営するからこそだろう。
いろいろなところで紹介されている代表の新保さんは「すきやきの地とはいえ食べたい肉を食べたい」というシンプルなポリシーを貫いている方だけに、ちょっとお話しただけでもいちいち納得。食べれば食べるほど、食べたい肉が増えていく「消費者」としての自分と、当然視点が違うのは新鮮で、強いメッセージが感じられた。
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肉をさばいて骨を断つ

焼かれた骨付き肉にナイフを入れて格闘 。最後に骨までしゃぶる、ということはTボーンやLボーンのステーキを注文すればよくあることだが、生の牛肉のブロック10kgを「骨抜きする」という機会に恵まれた。知っているようで知らない牛肉の骨の構造。いろいろな部位があるが、ある種基本とも言えるサーロインをさばくことになったが、微妙に残る骨の際の肉は、庖丁一本ではなかなかキレイに切り取ることができない。以前真剣にステーキ屋を開きたいと考えた時に「ランチにハンバーグをやって評判を上げる」というノウハウを聞いた。たしかにアメリカのように骨付き牛が大量に流通していて、枝肉から電動鋸でカットするならともかく、手でさばくのであれば、いわゆる「すき身」ができてしまうのは止むを得ない。それを再活用するためには、フランスでいうなら「タルタルステーキ」や「ステークアッシェ」などの
、機会でミンチにしないメニューが必然だ。今回は講師がイタリアンの料理人だったこともあり、ラグーにしてパスタソースで味わうということになった。
骨と骨の間にスッと庖丁を入れ、サーロインステーキの断面の部分が切り離すが、ここで躊躇するとその断面がギザギザになり焼きムラが出てしまう。そして骨にそって切り落とすのだが、こちらはスムーズにいく場所は骨からは離れて無駄が多くなる。かといって牛肉の骨は微妙に突起物がある形状なので、そこに筋や脂身や肉がこびりついていて、カットする頃合いはなかなか難しい。骨と骨はひとつひとつジョイントされているが、ここは手でねじるようにしてはずしてひと仕事が終了。熟成したものであれば、もちろんカビや腐敗している部分も含めて「掃除」をする必要があるし、結局10kgの塊肉とはいえ使える部分は6割程度。3〜4センチ程度の厚切りが数枚取って調理することになった。冷蔵庫から出して常温に近くなれば肉が柔らかくなり過ぎて切りにくくなるなど学ぶことが多かった。
結局肉好きを自称していても、魚でいえばパック入りの「刺し身」の状態でしか精肉に接していない、ということを思い知らされる体験だった。
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