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すき焼きの地でステーキに賭ける情熱を味わう

【ステーキは素敵だ】
「熟成肉」というワードがポピュラーになったここ数年。10年以上前からアメリカで「エイジングビーフ」のステーキを食していたボクにとって、塊肉を食す文化が受け入れられるかも、という期待がありつつ、日本では多くが「熟成ではなく腐敗」という事実にがっかりすることにもなった。大阪で生まれ「肉といえば牛肉」という文化で育ったが、東京では微妙な違和感を感じて30年。はじめて熟成肉を売る肉屋「中勢以」を見つけたのが10年前の記事である。
よくいろんな人から「ブログで書いているステーキ屋は海外ばかりだけど、日本ならどこがいい」と聞かれるのだが、それは一番答えにくい質問だ。というのも自分の中でその正解は見つからず、アメリカから日本に進出したステーキハウスは内外価格差が甚だしい。自腹でちょくちょく行くなら、その分アメリカで新店を開拓したくなるし、新しい潮流は世界中で起っている。
昨今周囲の肉好きの間でも評判で気になっていたのが、滋賀県草津にある精肉店「サカエヤ」の存在。そしてその肉を使ったビストロ「SAISIR」が併設されたことで、がぜん興味を持っていた。機会があって南草津駅からバスで10分という店舗にランチで向かう。近江牛を育む土地柄に、瀟洒な建物が存在感を放っている。ランチとはいえちゃんと牛肉を味わいたく、当然コースではなくアラカルトをオーダーした。
「サカエヤ」独自のこだわりともいえる完全放牧野生牛の「ジビーフ」、そして近江牛のランプ肉をオーダーする。厚切りの肉を長州備長炭を使い、珪藻土の釜の中で焼くのに30分ほどかかるとのこと。サラダや自家製シャルキュトリーの盛り合わせなどの前菜を食べつつ到着を待つ。木のプレートに載って焼き上ってきた肉は、たっぷりとつけ合わせの野菜が添えられていて、見た目にも色鮮やか。かといって肉自体は決して重くはなく、合計500gくらいだが食べ飽きないのは、やはり肉質のよさたるゆえんだ。釜だから輻射熱も使って焼く、というやり方だが、いろいろな部位で焼き方には「正解がないんですよ」と村田シェフは話す。肉の旨味を噛みしめながらその余韻に浸ったのだが、焼き具合は外側の焦げ目がまさに自分好みだった。ステーキは焼き方を聞かれるのが一般的だが、一番おいしいと思われる焼き方を供するというスタイルは、海外では往々にしてあることだ。おそらくもう少しレアだと、肉の厚みが勝ってしまうだろうし、焼きがこれ以上入ると外側の焦げ目が気になるだろう。ただこのあたりは人によって好みはあるに違いない。
シャルキュトリーではブーダン・ノワール(血を使った豚ソーセージ)の臭みがほとんどないのに驚いたし、フロマージュ・テット(豚の脳の煮こごり)も、パリの肉ビストロと全く同じテイストだった。牛肉だけではなく、肉尽くしでオーダーしても外れがないのは、やはり精肉店が経営するからこそだろう。
いろいろなところで紹介されている代表の新保さんは「すきやきの地とはいえ食べたい肉を食べたい」というシンプルなポリシーを貫いている方だけに、ちょっとお話しただけでもいちいち納得。食べれば食べるほど、食べたい肉が増えていく「消費者」としての自分と、当然視点が違うのは新鮮で、強いメッセージが感じられた。
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