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July 2022

ラジオ番組コンクール審査員が考えるツインパーソナリティ

【ラジオデイズ】

ニッポン放送を退社してちょうど30年が経った。在籍していた期間はおよそ10年だから、もうその3倍は放送局員を離れた立場でラジオにかかわっているワケで、今でも「元LF」という枕詞がつくことに違和感を感じつつも、都合よく使っていることもある。放送番組のコンクールの「ギャラクシー賞」を主宰する放送批評懇談会に、大先輩に誘われて半ばむりやり入ったのもその当時のことだ。自分が現役の制作者なのに、ましてや当時主流のコンクール作品(ラジオドラマやドキュメンタリー)ではなく、日々の生放送やをはじめとしたパーソナリティ番組が中心で、他人様が作った番組を批評するなんておこがましい、と思っていた当初。ただ編成部で「番組分析」という客観的に判断したうえでのコメントをする、という仕事をした経験があるし、公然と「ラジオは聴かない」と発言する「文化人有識者」が的外れの感想で評価することを目の当たりにした経験もあったので、制作者としての意見が何らかの参考になれば、と審査員という仕事を仰せつかることにした。

ラジオ番組のコンクールには現在「民間放送連盟賞」「ギャラクシー賞」「放送文化基金賞」「芸術祭選奨」などがあるが、「民間放送連盟賞」は毎年7月ごろには全国を7つのブロックに分けて地方審査があり、「予選」を勝ち抜いた作品が中央審査に送られて、全国大会での顕彰されることになる。その地方部門については長い間関西以外のいずれかの地区の審査員として呼ばれて、大量のラジオ番組を聞いてその地区での最優秀、優秀と序列を決めなければならない。その審査員はだいたい3人で、すんなりと全員が太鼓判を押すこともあれば、バラバラになることもある。そして気まずいのが2人が最高得点をつけて、1人だけ評価が低い、というものである。中国四国地方の審査会は「報道」「教養」「エンターテインメント」「生ワイド」の4部門を同じ3人の審査員が担当し、今回は2つの部門で自分がもう少しよい評価にすれば最優秀となるものがあった。
審査員は作品を審査するが、出品者は審査員を審査する。ここ2年コロナ禍でリモート開催だったが、今年はハイブリッド開催で出品した局の担当者が出席し、審査員に採点の根拠や評価について参加者全員の前で質問する、という久々に対面での質疑応答が行われた。
一般的なシンポジウムなどでは、こういう「質疑応答タイム」というのは、挙手する人が少なくてうやむやな場合も多いのだが、活発な意見交換が行われるのが中国四国地方の審査会の特徴。中央審査にすすめるか否かというのは担当者にとっては、大きな問題なので生半可な答えでは納得してもらえないし、実際十分な説明責任が果たせたかどうか終わってから悩むことになる。
一方そこからラジオ談義に発展することもある。今回は「ラジオドラマの存在意義」「ツインパーソナリティとワンマン」について、制作費がずっと縮小傾向の現状と今後をどう捕らえるか、という質問が出た。前者は昔と違ってデジタル編集で制作しやすくなったという背景と、人気声優の出演がネット番組でリリースされるなどしてニーズも増えて活況化するだろう、ということでよいのだが、後者についてはいろいろと考えさせられた。海外に比べて放送局の数が少なく、スケールが大きい時代の余裕ある体制での「メインパーソナリティとアシスタント」というう構図自体が、特殊なのであって、世界中のラジオ番組でそもそも「ひとり喋り」が基本というのが答えだ。省力化そして予算の都合で、という観点から現場の人数が減らされることを考えると、個人的には忸怩たる思いでもあるけれど、もともとラジオってそんなものと考えなければいけないのかも知れない。







 

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